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航空機輸送の歴史 サラブレッドの国際輸送は、プロペラ機が利用できるようになった1940年代末から1950年代初めに新しい時代に入った。 その初期における最も重要な出来事のひとつは、1949年に、ヴィンセント・オブライエン調教師がコテッジレイク(Cottage Rake)とハットンズグレース(Hattons Grace)をチェルトナム・ナショナル・ハント・フェスティバルに出走させるためにアイルランドから空輸したことだろう。両馬ともそこで優勝した。 それに先立って、1946年には、8頭の馬がアイルランドのシャノン空港から大西洋を横断して、米国の現ジョン・F・ケネディ国際空港、当時のアイデルワイルド空港に空輸された。この旅は22時間かかり、技術的理由から多くの中継地を必要とした。 1950年代初めにはアイルランド、英国、フランスの3カ国間でのサラブレッドの定期的な航空輸送が始まった。ブリストル社製の貨物機がそれに使われた。その前面搬入方式により、他の飛行機に比べて馬の搬入が容易だった。しかし、馬と一緒に搭乗した要員は騒音が大きすぎ、スピードが遅すぎると感じていた。馬の輸送量は増加を続け、やがて輸送中の馬の世話をする専門的な職業が生まれた。彼らは空港滞在中と飛行中における環境変化とそれへの対応策を熟知している。彼らは「航空輸送厩務員」として知られるようになった。初めは数人だったが、その後人数も増加し、その職業には正式な資格制度が設けられるまでになった。 1950年代末から1960年代初頭にかけてジェット機による馬の長距離輸送が始まり、輸送技術とスピードが更に大きく飛躍した。1970年代に貨物用ジャンボジェット機が導入されてからは、一度に輸送できる馬の頭数が飛躍的に増加した。 輸送方式はこのように革新的に変化したが、機内での馬房には引き続きオープン・ストール(Open-Stall)システムが利用された。オープン・ストール・システムは現在でもよく利用されている。そこでは馬を機内の荷物室に連れて行ってから馬を囲むように馬房が組み立てられる。
今日の航空会社は、その所有する航空機の飛行時間を最大限にして、その生み出す収益を最大にしなければならないという大きなプレッシャーの下に置かれている。飛行機は陸上では一銭も稼がないのである。空港に着陸した時から次の離陸までの時間を最短化するために、パレット利用の航空貨物システムが開発された。貨物を積んだパレットは、それまでは不可能とされた短い時間内に、機内に貨物を積み込み、到着後に下ろすことができる。現在のワイドボディ型ジェット機では、着陸後その満載の貨物を下ろし、再び新しい貨物を積み込んで給油を終えるまでに2時間ほどしか必要としない。また、現代の飛行機は、12時間以上の飛行能力を有している。 これらの進歩により、馬の空輸業界は一変した。従来は、馬輸送専用に飛行機をチャーターすることが一般的で、採算の合う頭数が集まらなければ輸送できなかったし、その行き先は1カ所だけというのが普通だった。現在では定期便が利用できるようになり、馬は最新鋭の飛行機のパレット貨物システムを利用して、ほぼ世界各地に旅することができる。航空機用の馬専用コンテナには閉鎖型と半閉鎖型とがあり、閉鎖型の利用が多い。 馬専用コンテナには2つの間仕切りがあり、最多3頭の馬を収容することができる。コンテナ内に間仕切りをひとつしか取り付けない場合には2頭用として使用することができる。必要ならばコンテナを1頭専用にすることもできる。また、かつては『防虫機能を備えた馬専用コンテナ』が用いられたこともあった。それはオーストラリアの検疫上の必要から使用されたもので、1993年のメルボルン・カップに出走するためにヴィンテージクロップ(Vintage Crop)をアイルランドからオーストラリアに輸送するためなどに利用された。同馬はレースに優勝した。2002年からは不要となった。
馬専用コンテナは馬輸送業界のニーズに合わせて改善が重ねられた。馬専用コンテナは大いに利用されるようになり、そのことにより、世界の競馬主催者は国際競走を開催することが容易となった。また、シャトルスタリオンを可能とすることによって北半球と南半球とが貴重なエリート種牡馬を共有できるようになった。 しかし、馬専用コンテナはその種類によってその構造と換気装置の機能が大きく異なっている。 アイルランド馬センター(The Irish Equine Center)は、飛行機による馬の長距離輸送を原因とする獣医学上の諸問題に以前から取り組んでいる。馬の空輸に関連する調査研究のための資金は、これまで香港ジョッキークラブ、国際馬術連盟(The International Equestrian Federation)、国際馬保護連盟(The International League for the Protection of Horses)及び個人から得ていた。 2002年には、アイルランド国立開発基金(National Development Fund)が、馬を空輸する際の貨物室内における空気の状況に関する調査に対して助成金を交付した。その調査の結果、離陸後僅か1時間ほどで馬が呼吸する空気の湿度が著しく低下することが明らかになった。長距離フライトの場合には11時間にもわたって、馬は害を受ける可能性のある乾燥した空気を呼吸することになるということである。機内の空気の乾燥度は飛行機の型によっても異なり、また同じ型の飛行機であってもそれぞれ異なるという。 これらの調査は、シルスー研究所(Silsoe Research Institute )とロスリン研究所(Roslyin Institute)が提携して行い、現在は馬専用コンテナ内の空気の質と換気に重点を置いた調査が行われている。この調査はまず、貨物室を模倣した実験用の風洞内に空の馬専用コンテナを設置して行われた。次に、合成樹脂製の馬が馬専用コンテナ内に置かれ、空気の流れがどのように影響を受けるかが調査された。 換気は馬専用コンテナの側面にある換気口を通して行われるにもかかわらず、驚いたことに、馬専用コンテナ内に十分な空気の流れを確保する最も有効な手段は、厩務員の控室のドアを開けることであることが分かった。 これらの調査は継続中であり、将来の馬専用コンテナ改良のための基礎データを提供するだろう。 〔Pacemaker 8月号 「Air-volution」〕
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