香港競馬の業績(2002〜2003年度)(香港)
 


対前年比8.5%減、香港競馬の魅力が失われたわけではない

 6月22日、香港ジョッキークラブのローレンス・ウォン理事長は、2002−2003競馬年度の終了の記者会見で、馬券売上高は714億6,500万香港ドル(約1兆1,434億4千万円)で、対前年比8.5%減少したと発表した。

 開催毎の平均観客数は27,900人で、対前年比7.3%の減少であった。

 ウォン理事長は、馬券売上の減少が香港社会に与える影響を心配していると語った。

 ジョッキークラブが支払う賭事税と収益税は、内国歳入庁が徴収する税額の約11%を占めており、ジョッキークラブが香港随一の寄付団体でもある。

 馬券売上のダウンにより、今シーズンの競馬賭事税は95億1,700万香港ドル(約1,522億7,200万円)で、対前年比9.4%の減少となった。

馬券売上減少の要因

  1. SARSの発生により、馬券売上高と観客数が3月から5月にかけて落ち込んだ。

  2. 昨年、賭事条例の改正後、違法な海外からの賭事は、ある程度抑制されたが、依然として、度重なる警察の手入れなど、違法ブックメーカー跋扈の多くの兆候があり、特に、違法サッカー賭けの横行があり、これらの行為が影響を与えた。

  3. 持続的な経済不況と高い失業率のために、人々はレジャ−や娯楽活動の支出に非常に慎重になっている。

 「一般社会・経済情勢の影響は、競馬産業とて例外ではなく、香港の他の産業と同様に大きな打撃を受けています。

 現在は、スポーツとか娯楽に対する人々の支出額が減っているだけで、競馬に対する興味や関心は、全く薄れていないので、売上低迷への影響は、比較的軽度で済んでいると思います。

 一方、ジョッキークラブの非常に進歩した馬券発売テクノロジーは、競馬ファンのニーズを先取りして的確に対応する体制を整えています」とウォン理事長はいう。

 マーク・シックス宝くじの発売金は、シーズン全体で50億香港ドル(約800億円)と推定され、昨年と比較して24%の上昇である。

 政府に入る宝くじの税額は増えて、12億5,000万香港ドル(約200億円)となる。

 社会福祉資本に助成することを目的とする宝くじ基金への支出は増加して、7億5,000万香港ドル(約120億円)となった。

 馬券売上高の減少が、慈善事業や地域プロジェクトへの寄付額に影響することは避けられないが、ジョッキークラブは、今後も社会の貧困層への福祉や地域の慈善活動の支援に引続き関わっていくとウォン理事長はいう。

 ジョッキークラブの今年の慈善および地域プロジェクトへの寄付額は、当初の予定のとおり、10億香港ドル(約160億円)以上に達する。

香港の国際競馬

 ジョッキークラブのエンゲルブレヒト=ブレスゲス競馬担当理事は、2002年暮の香港国際レースデーで、4つのG1の内、香港馬が3勝して以来、香港競馬の国際的地位は非常に高まっていると述べた。

 この快挙は「香港の競走馬の資質の向上に努め、香港の国際競馬を芝のワールド・チャンピオンシップとして発展させようとジョッキークラブが行ってきた弛まぬ努力により実現したものである」という。

 香港カップの勝馬プレシジョン(Precision)とオリンピックエクスプレス(Olympic Express)は、香港調教の4歳馬として、これまで最高の格付け117を獲得した。

 一方、香港スプリントの勝馬オールスリルズツー(All Thrills Too)も同じ格付けを認められ、2002年世界最高の古馬芝スプリンターにランクされた。

 また、リーディング調教師のジョン・サイズとリーディング騎手のダグラス・ホワイトの技術を称え、騎手デビュー以来、シーズン早々に注目を集めている優秀な見習い騎手3名、ポール・ロー、トーマス・ユエン、ジャッキー・トンの進歩にも言及した。

 さらに、調教師初シーズンのデニス・イップとシーン・ウッズの素晴らしい成績を賞賛した。

 国際競馬における香港の地位は、ニュージーランドで開催された第29回アジア競馬会議でウォン理事長がアジア競馬連盟の議長に選ばれた時、さらに強化されたとエンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は語った。


[hongkongjockeyclub.com June 22「Appeal of Hong Kong racing remains undiminished」]



ジョッキークラブ、役職員の給与削減を発表


 6月23日、香港ジョッキークラブの執行役員会は、役職員の給与削減について発表した。

 役員および管理職に対して、今年の10月から、ウォン理事長を含む役員クラスで10%、管理職クラスで8%の削減が行われる。

 その他、現業職を含む4,200人の常勤の職員に対しては「13月目の給与」(注:香港では主に税金の支払いに当てるため、12月に2ヶ月分の給与が支給されるという慣習がある)を支給しないと発表された。

 パートタイマーの賃金も売上減に比例して削減され、ジョッキークラブの管理費1,500万ドル(約18億円)が削減される。
 ジョッキークラブの広報発表は「この給与削減は、発売金の予測がつかない困難な状況下で、コスト削減のためのジョッキークラブの継続的な努力の一つです。

 ジョッキークラブの永続的な発展のため、給与と売上の調整を図りましたが、職員の雇用は今後も守っていくつもりです」という。

 「経済状況の悪化、SARSの直撃、違法賭事の脅威等のために、今シーズンの売上は、対前年比8.5%ダウンしましたが、これは1997年以来では、23%のダウンとなります」という。

 また、この発表では、市場の給与動向や他の大企業の給与の下降傾向が考慮されているとのことである。

 「失業率がかつてないほどの高率である現在(注:17日の発表で8.3%)、ジョッキークラブの職員のリストラは全く考えていません。

 今回発表した内容以外に職員の待遇切り下げに繋がるものはなく、従来どおり、勤務成績の良好な者に対してはそれなりの報酬を支払います。

 ジョッキークラブは能力の高いスタッフには高い報酬を支払い、最高の能力を持つ者により業務が運営されています。」

 調教師、騎手については、既に、来シーズンから調教料・騎乗料が10%カットされることが発表されている。


〔6月24日付 サウスチャイナ・モーニングポスト紙〕

 
BHBの「英国競馬見直し委員会」に出席(イギリス)

  1. 概況
  2.  4月29日、JRAロンドン駐在員事務所は、BHB主導の英国競馬見直し委員会に傍聴のために参加した。

     そこには、あらゆる方面の競馬関係者(調教師、騎手、ジョッキークラブ、関連企業、マスコミ等)が出席していた。

     この会議の目的は、昨年のテレビ番組における競馬サークルのスキャンダル放映を発端とするジョッキークラブおよび英国競馬へのイメージダウンを回復させることと、昨今のBHBに対するOFT(公正取引委員会)の勧告に対する回答のための新たな提案を発表することであった。

     テーマは「メリット・システムの強化による公正競馬」で、今回、発表された報告書の狙いは、以下の6点であり、その実施のために必要な競馬番組の編成面での改革案を具体的に提言している。

    1. 競馬の公正確保による競馬ファンの信頼回復

    2. 効果的なメリットシステムの導入

    3. ギャンブル市場で縮小しつつある競馬のシェア回復および売上の拡大

    4. メリットシステムによる競走馬の出走機会の確保

    5. 英国競馬の多様性の維持

    6. 英国生産界の維持および改善

  3. 具体的提言
  4.  BHBが提案しているのは、メリットシステム(競走馬の能力・実績に応じてメリットを得られるシステム)を確立し、競争性を高めることにより、本来競馬の持っているスポーツ的要素をアピールし、競馬ファンの信頼を回復する競馬番組を編成構築していくことである。

    1. 平地競走を3つのカテゴリーに分ける
    2.  競馬の競争性を高めていくためには、全てのクラスにいる馬により多くの競走機会を与えることが重要である。

       土曜日のイブニングレース(夕方開催)や日曜日開催を取り入れ、開催日数を増やすと共に、英国平地競馬を下記に述べる次の3つのカテゴリーに分けて実施していく。

       ○プレミアレーシング(質・格ともに最高峰に位置する開催)

       プレミアレーシングとは、競馬ファンに最高峰に位置する開催であると認知されブランド化された結果、入場人員・発売金の増が望める開催でなくてはならない。(チェルトナムフェスティバル・グランドナショナル開催・ダービー開催・ロイヤルアスコット等)

       全ての競馬場は、このプレミアレーシング開催を要望できるが、会場である競馬場の施設をプレミアレーシングに相応しい施設に整える必要がある。

       プレミアレーシング開催の割合は全体の開催日の10%以下とする。

       ○ナショナルレーシング(全国的競走)

       このカテゴリーの開催が英国競馬開催の大部分を占めることになる。またプレミアレーシングと共に英国競馬の核として発展させなければならない。

       プレミア・ナショナルレーシング開催は、レベルの高い競走馬によって維持されなければならないため、低レベルの競走馬(レイティングが45以下)はこの2つのカテゴリーの競走に出走すべきではない。

       レイティング45以下の競走馬は、オーナーにとって経済的にも所有する価値は無いと思われるが、オーナーの希望でレースに出走させたいということであれば次に述べるリージョナルレーシングへの出走となる。

       ○リージョナルレーシング(地区別競走)

       レーティング45以下の競走馬が対象となる。リージョナルレーシングはプレミア・ナショナルレーシングとは全く別のカテゴリーの開催とする。

       よってこの開催の成績については、プレミア・ナショナルレーシング開催とは別のものになり、BHBおよびIFHA(パリ会議)の公式記録とはならない。

       リージョナルレーシングは、どの競馬場でも開催することが出来るが、もしそれを望まない場合は無理に開催する必要は無い。

       この提案は、各競馬場がそれぞれ自らの判断で開催日、開催内容等を調整していくことが可能であり、また、オーナーにとっては、どのカテゴリーに出走させるかはオーナーの自由判断になるので、OFTの勧告で求められている自由競争が競馬場間で働くようになる。

    3. 平地競走を5つのクラスに分ける(クラス1−5)
    4.  現在、平地競走はAからGまでの7つのクラスに分かれているが、そのクラス分けは理解しにくく、もっと単純であるべきである。

       全体のクラス数を減らし、それぞれのクラスの幅を広げ大きな範囲の中で競走させることで、広い範囲のクラス内で競争が激しくなり、これまで以上に各競走馬の持つ能力が発揮され評価されるようになる。

       この5つのクラス分けについては、クラス1がプレミアレーシング、クラス5がリージョナルレーシングとする。

    5. ハンデ競走のハンデの幅を、これまでの13.5kgから4.5〜6.5kg程度まで狭める。
    6.   現在、ハンデキャップの幅が非常に大きすぎるため本当の馬の能力を競うという観点においては、ハンデキャップ競走におけるメリットシステムが働きにくくなっている。

       下位クラスの馬にとっては、ハンデによって賞金を勝ち得るチャンスは生れるが、上位クラスの馬にとっては、下位クラスの馬との競走の中ではその馬の本当の能力が評価されにくくなる。

       また、このシステムが昨年のテレビ報道にもあったような不正行為を引き起こす原因にもなりかねない。(重いハンデをつけられないようにわざと能力を出し切らない等)

       よって、ハンデの幅を狭めることで、より馬の能力を重視した競走を提供することができる。

    7. 各クラスの賞金額にこれまで以上の格差を設ける
    8.  これもメリットシステムの確立という点では重要な要素であり、今まで以上にクラス毎の賞金に格差を設けることにより、より多くの賞金を得るために上のクラスを目指すという競争原理が働くようになる。

    9. 馬体重測定
    10.  馬券を買う競馬ファンのためとスポーツとしての公正競馬を維持していくために馬衡器を各競馬場に導入する。

       レース前に馬体重を測定し記録として残すことで、馬券を買うファンにとってはその馬が勝つチャンスを見逃さないための重要な要素となり得る。

    11. 英国障害競馬に関して12月の初旬に国際招待競走を新設する
    12.  これは、英国最高峰の障害競走開催であるチェルトナムフェスティバルの前に開催することで障害競走の質を高め維持する意味を持つ。

       また、4月に日本で行われる中山グランドジャンプは、国際的に大きな関心を集めており、英国においても中山GJと同等の賞金を持った国際招待競走を新設することで国際的関心を高めることができる。

       現在、英国競馬界はまさに過渡期にあると言える。昨年のテレビ放映がきっかけとなりジョッキークラブが持つ規律部門が新組織へ移行されるという提案、また、BHBが競馬施行に関する権限を持つことで、各競馬場間で本来行なわれるべき自由競争が行なわれていないというOFTによるBHBへの勧告等の様々な要因が、250年間ジョッキークラブによって伝統が守られてきた英国競馬を変えようとしている。

       今後、BHBを中心として様々な改革が行なわれると思うが、伝統を重んずる英国競馬が時代に取り残されないためにどう変っていくかをこれからも注目していきたい。


[JRA ロンドン駐在員事務所 月次報告から]