2005年のロイヤルアスコット(Royal Ascot)開催は、ヨーク競馬場(York Racecourse)で開催されると発表されたが、少しずつアスコット競馬場の改築工事の全容が明らかになってきた。
この総工費1.8億ポンド(約360億円)にも及ぶイギリス最大の改築工事がどのように進んでいるかその真相に迫ってみた。
[質問]
イギリス最大の改築工事になると聞いていますが、概要を教えてください。
[回答]
スタンド建築の総指揮は、有名な建築家のロッド・シェアード氏で、カーディフのミレニアム・スタジアム、2000年のオリンピックで使用したスタジアム・オーストラリアおよび現在、ウインブルドン・センターコートの開閉式屋根を手掛けているHOK Sport+Venue+Eventの手により工事計画が進められています。
新しいスタンドは、中央がガラス張りとなる構造で、自然光を中央のコンコースに取り込むことで、一定の温度が保てる空間を実現します。
スタンドの下には、パドックから馬場へのアクセスおよび競馬場から幹線道路へのアクセスを考慮に入れた地下道が新設され、慢性的な道路混雑の緩和に貢献できると考えています。
パドックは、スタンドの真後ろに移動させ、誰もが観覧できるパドックを目指しています。
馬場については、ゴールポストをスタンドから42m北へ移動させ、スタンドの後ろに新しいパドックを設置するスペースを確保します。
[質問]
アスコット競馬場の全面改築に踏み切った理由を聞かせてください。
[回答]
アスコット競馬場は、ヨーロッパの伝統的な競馬場として多くの人に親しまれていますが、常に、トップクラスのレースを提供する場としては、老朽化も進み、年々時代遅れとなってきています。
我々は世界でも5本の指に入る競馬場であるという自負心から、全面改築へ踏み切りました。
[質問]
全面改築を行う上で最も困難なことは何ですか?
[回答]
難問は山のようにあり、一つを挙げることは困難ですが、来年のロイヤルアスコット開催は、我々が乗り越えなければならない課題の一つです。
2005年は、ヨーク競馬場で開催されますが、アスコット競馬場で特別編成されたスタッフが中心となり、ヨーク競馬場のスタッフと共にロイヤルアスコットを運営していきます。
また、限られた短い期間で全ての工事を完了させなければならないというのも大きな課題の一つです。
[質問]
新しいスタンドは、今までのイギリスにはないコンセプトのスタンドになると思いますが、どのようにしてそのスタンド構想が生まれたのですか?
[回答]
新しいグランドスタンドの構想では、下層部分を一般エリア、上層部分をメンバーエリアとしていますが、イギリスの競馬場の伝統であるメンバーと一般客をエリアで明確に区分する構造とはなっていません。
誰もがパドックやゴール前で観戦することができ、パドックはスタンド裏側に配置され、出走馬はスタンド下の地下道を通って本馬場に入場します。
メンバーと一般客の区分については、まだ、最終プランは出来上がっていませんが、基本的には、ロイヤルエンクロージャーおよびグランドスタンドにいるお客さんが、地上レベルで、全ての施設およびパドックに簡単に行け、誰もがアスコットで素晴らしい競馬を楽しめるという構想で工事を進めています。
一部のメンバーエリアを除いて、メンバーエリアは、殆んどスタンドの上層階に設置されます。
しかし、一般のお客さんにも、スタンドの上層階、つまりメンバーエリアの雰囲気の中で競馬観戦できるようにすることも今回の新しいスタンドの目標の一つです。
[質問]
新しいスタンド、馬場の特徴を教えてください。
[回答]
目玉の一つは、グランドスタンドの屋上から大屋根が観客席を覆うように設置されます。
また、今までと変わらず、どこにいても芝生の上にいるような、常に自然と一体になり、自然の美しさを残した競馬場になるのは間違いありません。
新しい1,600mの直線コースも目玉となると考えています。コースの下に地下道を通すことでレースを妨げることなく馬場内へのアクセスを可能にしています。
[質問]
最後に、新しいアスコットはどのような客層をターゲットとしていますか?
[回答]
誰もが行きたくなるような競馬場作りを目指しています。
英国競馬と言えば、ロイヤルアスコットが頭に浮かぶように、英国の人々は、アスコット競馬場には特別な思いを抱いています。
[注]
アスコットで働いている人々は、女王陛下の下で働いているという誇りと責任感を強く持ちながら開催運営に当たっている。今回の改築についても、自分たちの、また、女王陛下の競馬場をより良くしようという気持ちが伝わってくる。
新しいスタンドの構想については、日本においては一般的な構造であるが、アスコット競馬場長が日本の東京競馬場他幾つかの競馬場を調査したことがあり、日本の競馬場の影響を色濃く感じさせる。