種牡馬オクタゴナルと現役ナンバーワンのロンロの親子競演
(オーストラリア)
 

 1996年のオーストラリアの年度代表馬オクタゴナル(Octagonal)は、ハンターヴァレー(Hunter Valley)のウッドランズ・スタッド(Woodlands Sud)に繋養されているが、息子ロンロ(Lonhro)の引退前のレースに駆けつけ、G1競走を数多く制しているロンロと競演するという歴史に残る一こまを刻むこととなった。

 この異例ともいえるイベントは、この種のものとしては、オーストラリアで初めてであり、ローズヒル競馬場(Rosehill Racecourse)で、3月20日のランヴェット・ステークス(Ranvet Stakes)(Aus-G1)あるいは4月3日のジョージ・ライダー・ステークス(George Ryder Stakes)(Aus-G1)で行われ、多くの観客を集めるだろう。

 オクタゴナルは、現役時、ロンロの馬主・生産者であるボブ・インガム(Bob Ingham)およびその兄ジャック(Jack)の所有であった。

 ロンロは、ウッドランズ・スタッドでオクタゴナルと一緒に種牡馬生活に入る予定であるが、4月、ロイヤル・ランドウィック競馬場(Royal Randwick Racecourse)のクイーン・エリザベス・ステークス(Queen Elizabeth Stakes)(Aus-G1)が最終レースになると見られている。

 ジョン・ホークス(John Hawks)調教師は、オクタゴナルを調教した一人であるが、ロンロがフレミントン競馬場(Flemington Racecourse)のダーレー・オーストラリア・カップ(Darley Australian Cup)(Aus-G1)でセンセイショナルな勝利を挙げた時、この2頭について質問された。

 「ロンロは、私が調教した中でも最高クラスに入る大変優れた馬であり、スーパーホースですが、オクタゴナルは1頭しかいません」と答えた。

 ザビール(Zabeel)の牡駒のオクタゴナル(12歳)は、G1競走10勝を含め、27戦13勝、収得賞金総額は4,535,801ドル(約5億4,500万円)であり、2歳および3歳時にチャンピオンに輝いた。

 ロンロ(6歳)は、父馬と同じ黒鹿毛で、G1競走10勝を含め、32戦24勝、収得賞金総額2,812,080ドル(約3億3,800万円)である。



[Thoroughbred Times Com. Mar. 9「Octagonal and son Lonhro could make Australian history」]

 
南アのチャンピオン馬ナショナルカレンシー、ドバイで安楽死
(ドバイ)
 


 2回南アフリカのチャンピオン馬となったナショナルカレンシー(National Currency)は、ドバイで、蛇またはサソリに咬まれたことによる蹄冠部の膿瘍を原発とする敗血症および蹄葉炎により、救うことのできない状況となり、3月11日(木)、安楽死となった。

 このチャンピオン馬安楽死のニュースは、馬主および生産者のグラハム・ベック(Graham Beck)氏と調教師のマイク・アジー(Mike Azzie)氏が、同馬がようやく健康を取り戻したということを聞いて愁眉を開いた数日後にもたらされた。

 ナショナルカレンシーは、2月5日、ナド・アルシバ(Nad Al Sheba)競馬場のアル・シンダガ・スプリント(Al Shindagha Sprint)で、6馬身差の楽勝で人々を驚嘆させたレースの4日後に発熱し、ドバイの獣医診療所に運ばれた。

 このため、出走予定のドバイ・ゴールデン・シャヒーン(Dubai Golden Shaheen)(G1)へは出走できなくなった。

 アジー調教師は、当初の予定では、このナショナルアセンブリ(National Assembly)産駒の5歳の鹿毛馬を、ドバイの後、ロイヤルアスコット開催に出走させるつもりであった。

 ナショナルカレンシーが生産・育成されたベック氏のハイランズ牧場(Highlands Stud)のマイク・シャーキー(Mike Sharkey)支配人は、ナショナルカレンシーのような馬は一生に一度しか遭遇できない馬だと語った。

 シャーキー氏は、「ナショナルカレンシーは退院したが、激しい下痢を発症し衰弱しました。その後、蹄葉炎となり、蹄骨の変位という大きな問題を抱えるようになりました。

 我々は、ロイヤルアスコット(Royal Ascot)開催とジュライ・カップ・ステークス(July Cup Stakes)(G1)に出走させ、次に、ブリーダーズ・カップ・スプリント(Breeders' Cup Sprint)(G1)、その後、香港スプリント(Hong Kong Sprint )(G1)を予定していました。

 ナショナルカレンシーは、南アから出た最高の馬の1頭で、馬主のベック氏と調教師のアジー氏は打ちのめされています」という。

 スペンドアバック(Spend a Buck)の牝駒エンチャンテッドダラー(Enchanted Dollar)を母とするナショナルカレンシーは、スコヴィル(Scoville )競馬場におけるゴールド・メダル・ステークス(Gold Medallion Stakes)(Saf-G1)を勝ち、2002年、南アの2歳馬チャンピオンとなった。

 翌年、ターフフォンテイン(Turffontein)競馬場のコンピュータフォーム・スプリント(Computaform Sprint ) (Saf-G1)およびクレアウッド(Clairwood)競馬場のマーキュリー・スプリント(Mercury Sprint)(Saf-G1)で勝ち、南アの3歳馬チャンピオン賞も獲得した。

 また、同馬は、昨年の12月14日、香港のシャティン競馬場(Sha Tin Racecourse)の香港スプリント(G1)でサイレントウイットネス(Silent Witness)の2着となっている。

 ナショナルカレンシーは、4年間に15戦10勝、490,210ドル(約58,825,200円)を獲得した。



[Thoroughbred Times.com Mar.13「South African champ National Currency euthanized in Dubai」]

 
アスコット競馬場のリニューアル(イギリス)
 

 2002年6月、総工費1.8億ポンド(約360億円)のアスコット競馬場(Ascot Racecourse)の改築計画が発表された。

 東京競馬場の5億ポンド(約1,000億円)の総工費とは比較にならないが、ヨーロッパでは、最大規模の改築工事になる。

 アスコット競馬場は、2004年9月の最終開催終了後、改築工事に本格的に乗り出すため、20ヵ月間の休止期間に入り、完成は2006年である。

 2004年8月のシャーガー・カップ(Sherger Cup)以降、従来、アスコットの直線コースで実施されていたレースは、コーナーのある円形コースで実施しなければならなくなる。

 アスコット競馬場は、英国の29のG1競走の内、9つが行われる代表的な競馬場であるが、この改築により、全容が一新される。

 アスコット競馬場は、英国の伝統的な魅力に溢れる競馬場で、文化財にも指定されている赤レンガの建造物は、人々の心を惹きつけ、世界でも最も魅力的な競馬を提供し続ける競馬場である。

 今回の改築は、競馬場の従業員だけでなく、競馬ファン、調教師厩舎スタッフ等、競馬を取巻く多くの人々の願いであった。

 このプロジェクトは、馬場および施設の面で、大規模な工事が計画されており、特に、直線1,600mのコースの改修は最大規模のものとなる。

 競馬場スタンドと競馬場前の幹線道路との間のスペースを広げるため、1,600mの直線コースは、スタンドより北へ42m移動される。

 アスコット競馬場では、特に、ロイヤルアスコット(Royal Ascot)開催期間中の車と人の混雑が悩みの種となっていて、直線コースの改修が混雑緩和の最重要ポイントであった。

 ひどい混雑を少しでも緩和するための幹線道路下の地下道建設も重要な改修の一つである。ひどい渋滞の原因は、観客が通行する度に車の流れをストップさせなくてはならなかったことにある。

 9,000名の観客を想定した新しいパドックは、現在のパドックの位置よりも南に移動される。

 競馬ファンにとっての大きな目玉は、全長350mの全く新しいグランドスタンドの建築である。ガラス張りの6階建てスタンドは、観客席を覆うように斬新で軽量の大屋根が取り付けられ、スタンド前の芝生を囲むように婉曲した構造となる。

 厩舎スタッフの念願の宿舎の工事は、25万ポンド(約5,000万円)をかけて改修される。

 この大規模な改築は、1.8億ポンドという莫大な費用の調達の他、一時的に開催中止が避けられないが、メディア権の関係で開催日数を減らすことができず、イギリスの他の競馬場へ開催日を振り替えなければならない。

 2005年のロイヤルアスコット開催は、ヨーク競馬場(York Racecourse)で開催され、残りはウインザー競馬場(Royal Windsor Racecourse)、ソールズベリー競馬場(Salisbury Racecourse)、リングフィールド競馬場(Lingfield Park)に振り分けられる。

 190部屋を持つホテルの建設は断念され、当初の計画よりは縮小しているが、豪華で気品溢れるスタンドの完成は、多くの人々の期待を惹きつけ、競馬ファンを含めた全ての関係者は、しばらくの間のアスコット開催の休止を楽しみながら、その完成を心待ちしている。



[ロンドン発 イギリス情報 JRA London: Katherine Baird「The Redevelopment of Ascot Racecourse」]



アスコット競馬場・広報担当マネージャー
ニック・スミス氏に対する突撃インタビュー

 2005年のロイヤルアスコット(Royal Ascot)開催は、ヨーク競馬場(York Racecourse)で開催されると発表されたが、少しずつアスコット競馬場の改築工事の全容が明らかになってきた。

 この総工費1.8億ポンド(約360億円)にも及ぶイギリス最大の改築工事がどのように進んでいるかその真相に迫ってみた。


[質問]

 イギリス最大の改築工事になると聞いていますが、概要を教えてください。


[回答]

 スタンド建築の総指揮は、有名な建築家のロッド・シェアード氏で、カーディフのミレニアム・スタジアム、2000年のオリンピックで使用したスタジアム・オーストラリアおよび現在、ウインブルドン・センターコートの開閉式屋根を手掛けているHOK Sport+Venue+Eventの手により工事計画が進められています。

 新しいスタンドは、中央がガラス張りとなる構造で、自然光を中央のコンコースに取り込むことで、一定の温度が保てる空間を実現します。

 スタンドの下には、パドックから馬場へのアクセスおよび競馬場から幹線道路へのアクセスを考慮に入れた地下道が新設され、慢性的な道路混雑の緩和に貢献できると考えています。

 パドックは、スタンドの真後ろに移動させ、誰もが観覧できるパドックを目指しています。

 馬場については、ゴールポストをスタンドから42m北へ移動させ、スタンドの後ろに新しいパドックを設置するスペースを確保します。


[質問]

 アスコット競馬場の全面改築に踏み切った理由を聞かせてください。


[回答]

 アスコット競馬場は、ヨーロッパの伝統的な競馬場として多くの人に親しまれていますが、常に、トップクラスのレースを提供する場としては、老朽化も進み、年々時代遅れとなってきています。

 我々は世界でも5本の指に入る競馬場であるという自負心から、全面改築へ踏み切りました。


[質問]

 全面改築を行う上で最も困難なことは何ですか?


[回答]

 難問は山のようにあり、一つを挙げることは困難ですが、来年のロイヤルアスコット開催は、我々が乗り越えなければならない課題の一つです。

 2005年は、ヨーク競馬場で開催されますが、アスコット競馬場で特別編成されたスタッフが中心となり、ヨーク競馬場のスタッフと共にロイヤルアスコットを運営していきます。

 また、限られた短い期間で全ての工事を完了させなければならないというのも大きな課題の一つです。


[質問]

 新しいスタンドは、今までのイギリスにはないコンセプトのスタンドになると思いますが、どのようにしてそのスタンド構想が生まれたのですか?


[回答]

 新しいグランドスタンドの構想では、下層部分を一般エリア、上層部分をメンバーエリアとしていますが、イギリスの競馬場の伝統であるメンバーと一般客をエリアで明確に区分する構造とはなっていません。

 誰もがパドックやゴール前で観戦することができ、パドックはスタンド裏側に配置され、出走馬はスタンド下の地下道を通って本馬場に入場します。

 メンバーと一般客の区分については、まだ、最終プランは出来上がっていませんが、基本的には、ロイヤルエンクロージャーおよびグランドスタンドにいるお客さんが、地上レベルで、全ての施設およびパドックに簡単に行け、誰もがアスコットで素晴らしい競馬を楽しめるという構想で工事を進めています。

 一部のメンバーエリアを除いて、メンバーエリアは、殆んどスタンドの上層階に設置されます。

 しかし、一般のお客さんにも、スタンドの上層階、つまりメンバーエリアの雰囲気の中で競馬観戦できるようにすることも今回の新しいスタンドの目標の一つです。


[質問]

 新しいスタンド、馬場の特徴を教えてください。


[回答]

 目玉の一つは、グランドスタンドの屋上から大屋根が観客席を覆うように設置されます。

 また、今までと変わらず、どこにいても芝生の上にいるような、常に自然と一体になり、自然の美しさを残した競馬場になるのは間違いありません。

 新しい1,600mの直線コースも目玉となると考えています。コースの下に地下道を通すことでレースを妨げることなく馬場内へのアクセスを可能にしています。


[質問]

 最後に、新しいアスコットはどのような客層をターゲットとしていますか?


[回答]

 誰もが行きたくなるような競馬場作りを目指しています。

 英国競馬と言えば、ロイヤルアスコットが頭に浮かぶように、英国の人々は、アスコット競馬場には特別な思いを抱いています。


[注]

 アスコットで働いている人々は、女王陛下の下で働いているという誇りと責任感を強く持ちながら開催運営に当たっている。今回の改築についても、自分たちの、また、女王陛下の競馬場をより良くしようという気持ちが伝わってくる。

 新しいスタンドの構想については、日本においては一般的な構造であるが、アスコット競馬場長が日本の東京競馬場他幾つかの競馬場を調査したことがあり、日本の競馬場の影響を色濃く感じさせる。



[ロンドン発 イギリス情報 「突撃インタビュー」]