香港ジョッキークラブ
マカオとの賭事協定の締結で、巨大市場中国に触手(香港)
 

 香港およびマカオ間の馬券相互発売協定(Cross Betting Arrangement)の締結により、香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)は、中国南東部の巨大な人口密集地の市場に間接的にアクセスできるようになる。

 カジノ界の大立者のスタンリー・ホー・ユン-ソン(Stanley Ho Hung-sun)は、香港ジョッキークラブの総売上に組入れられるマカオの売上額は、1日あたり1億香港ドル(約15億4,000万円)になると見積もっている。

 香港にとっての最大の利点は、マカオのタイパ競馬場(Taipa Racecourse)の5つの免許を受けたブックメーカー(Bookmakers)および勝馬投票代理店(Betting Agents)を利用することができることである。

 これらの勝馬投票代理店は、昨年5月から、場外の競馬ファンを対象とした電話投票(Telephone Betting)を開設している。

 マカオ・ジョッキークラブ(Macau Jockey Club:MJC)の競馬担当理事のイアン・パターソン(Ian Paterson)氏は、「電話投票を経由した賭金のかなりの部分は、中国国境を越えたものであることは明らかです。」

 「昨年、マカオ・ジョッキークラブの売上額は急増しましたが、電話投票の売上額がその原動力になっています」と述べている。

 その額は、2002年5月、香港の賭博条例(Betting Ordinance)が改正された影響でほぼ半減し、開催日1日あたり2,500万香港ドル(約3億8,500万円)と激減していたが、現在は、通常のマカオ開催日1日あたり約1億2,000万香港ドル(約18億4,800万円)となっている。

 マカオの総売上の中に占める中国本土からの購入額の説明を求められた時、パターソン氏は、「勝馬投票代理店では、独自の賭事勘定上の処理があるので、2002年5月以降の増加分である1日あたり9,500万香港ドル(約14億6,300万円)の全額が、国境を越えてきた資金であるとは断定できません。」

 「正確な数字の算出は困難ですが、中国からの実際の売上額は、勝馬投票代理店の免許交付前と比較して、おそらく4〜6倍になっていると思います」と述べている。

 パターソン氏は、4月10日(土)までに協定が調印され、両国政府にこの計画の承認を求める手続きが取られると語っており、実施に移された場合、マカオ・ジョッキークラブは、取扱った売上の中から手数料収入を得ることになる。

 パターソン氏は、「香港の競馬開催日には、マカオ競馬場では、香港競馬の馬券の販売等、通常のあらゆるサービスが行われ、マカオ周辺では、14ヵ所の場外勝馬投票センターで馬券が販売され、勝馬投票代理店は電話投票の営業を行います。」

 「勝馬投票代理店は、場外の競馬ファンから香港競馬の電話投票を受付け、マカオ・ジョッキークラブを通じて、香港のプール・ベッティングに賭け戻すことになります」と語る。

 一方、今回の賭事協定の締結は、香港ジョッキークラブが、過去、合法的な賭事口座における問題の多い顧客慣行の一つであるとして禁止してきた、高額を賭けるプロのギャンブラー(High-volume Professional Gamblers)のための口座開設に対する扉を開けることになるかもしれない。

 香港ジョッキークラブは、過去10年間、多くの大口賭け手(Large Bettor)を排除してきたが、結果的にジョッキークラブの売上は近年低迷し、過去6年間、売上高の下落が続いている。

 売上高は、今年も著しく下落するだろうが、パターソン氏は、「今まで、口座を開くことが出来ずに困っていた人々が、マカオの我々の所で口座を開けるようになり、香港競馬に賭ける新しい方法を見つけることができるでしょう」と言っている。

 4月4日(日)、マカオ-香港トロフィー(Macau-Hongkong Trophy)が開催されたマカオ・ジョッキークラブ(MJC)の総売上高は、1億5,400万香港ドル(約23億7,160万円)で、最高記録に100万香港ドル(約1,540万円)足りないだけであったが、パターソン氏は、全体的に判断してマカオ最高の競馬開催日であったと言っている。

 同氏は、「通常、ダービーが我々の最大の競馬開催ですが、今回の観客数は、ダービー開催よりも多く、最高の良い雰囲気でした」と述べている。

 当日、マカオ・ジョッキークラブは、早い時間帯にマカオ-香港トロフィーの馬券を購入した競馬ファンに、気前の良い“リベート”を提供することで売上の向上に貢献した。

 200香港ドル(約3,080円)の馬券購入者に対して、メインレースで使用できる50香港ドル(約770円)の馬券クーポン券(Betting Voucher)が手渡された。


[South China Morning Post Apr.6 「China carrot in cross-bet deal」]

香港・マカオ間のサイマルキャストの行方(香港)

 4月4日(日)、派手な宣伝の中で発表された珠江デルタ(Pearl River Delta)をまたぐサイマルキャスト馬券発売(Simulcast Betting)は、香港にどの程度の利益をもたらすのだろうか。

 マカオジョッキークラブ(MJC)と香港ジョッキークラブ(HKJC)は、長い間、あらゆることにつき話し合ってきたが、5月中に、両国政府の承認を受けた後、実現に向けて始動を開始する。

 サイマルキャスト馬券発売により、香港ジョッキークラブの売上に組入れられるマカオの売上額は、1日あたり1億香港ドル(約15億4,000万円)になると見積もられている。

 マカオ・ジョッキークラブには、取次ぎ機関として安定した手数料収入が入ることになるが、香港ジョッキークラブの最終的な利益については、詳細な分析が必要である。

 例えば、この見積られた1億香港ドル(約15.4億円)の内、現在、香港の売上に直接入っているのはどの位だろうか、マカオのサイマルキャストが始まった場合、その資金流入の経路が代わっただけでは何も得るものはない。

 一方、マカオのカジノにやってくる外国人は、マカオに居ながらにして香港の馬券を買う可能性があり、そうなれば売上は増えることになる。

 マカオ・ジョッキークラブの競馬担当理事イアン・パターソン(Ian Paterson)氏は、過去、香港ジョッキークラブが勝馬投票口座の開設を認めなかったことに憤慨している外国のプロの馬券購入者を、マカオは締め出さないと明言している。

 それどころか、マカオ・ジョッキークラブは、このような棚ぼた式の大口の顧客を諸手を挙げて歓迎する気配がある。

 マカオ・ジョッキークラブには、パールリヴァー・デルタ(Pearl River Delta)の境界を越えてやってくる香港ドルや人民元の賭金を集め易くしてくれるサイマルキャストに対する期待がある。

 タイパ(Taipa)競馬場の公認の勝馬投票代理店(Betting Agents)は、過去10ヵ月間、場外の競馬ファンからの電話投票を引き受けてきたが、今では、長い間、売上低迷に苦しんできたタイパ競馬場の起死回生を単独で支えている。

 マカオ・ジョッキークラブは、賭金の多くが中国から流れ込んでいることおよび中国本土の他のマーケットと同様、中国の賭事市場とのビジネスが大きな成長をもたらす可能性があることを率直に認めている。

 最も楽観的なシナリオとしては、サイマルキャストが急激に発展し、香港の売上げが増大し、マカオに多額の手数料収入が入ることである。しかし、この時、中国当局はどんな態度を取るのだろうか。

 中国には、北京にワールドクラスの競馬施設が少なくとも1ヵ所以上あるが、中央政府がギャンブルの合法化を先延ばしにしていて、競馬施設が殆んど利用されていないため関係者は苦闘している。

 中国当局は、中国本土からマカオへ、延いては香港へ目立たないように資金が流出する計画を、どのように見ているのであろうか。

 中国本土からマカオのカジノや競馬産業に多額の賭金が流れていることは周知の事実であり、サイマルキャストについても、既定の事実として中国当局の暗黙の合意は折込み済みであろう。

 もう一つの問題点は、主客転倒のシナリオである。

 この賭事協定では、マカオが独自にリベートを提供して顧客を集める勝馬投票‐即ち、マカオにおける香港競馬の払戻金が、香港のプール・ベッティングの払戻金より高くなる現象‐の提供を認めることは、まずありえないだろうが、マカオの勝馬投票代理店が電話投票による場外の顧客を獲得するための手段として、独自のサービスを提供することまで制限できるという保証はない。

 昨年の6月15日、サウスチャイナ・モーニングポスト紙(South China Morning Post)は、マカオの最近の売上躍進の理由が、新たに認可された勝馬投票代理店によるものであると報道したが、その時、パターソン競馬担当理事は、「勝馬投票代理店は、マカオのトータリゼーターと同額の払戻金を顧客に支払っていますが、彼らが顧客に提供しているサービスや条件の詳細については存じません」と語っている。

 マカオのような非常に競争の激しい賭事環境では、勝馬投票代理店を通して、香港競馬に賭けたいと思う馬券購入者を勧誘するために勝馬投票代理店がどのような条件を提示しているかを語れる者がいるだろうか。

 世界中のカジノは、大金を賭ける者を取り込み、彼らをテーブルに就かせるためにあらゆるサービスを提供している。なぜ、マカオの勝馬投票代理店が、それ相応のサービスを提供してはいけないのだろうか。

 マカオの勝馬投票代理店は、目の前にいる顧客との取引には非常に熱心である。

 もし、香港住民が、マカオの勝馬投票代理店を通した電話投票で、香港競馬に賭けようとした場合には、香港の賭博条例違反となる。

 しかし、フェリーやヘリコプターでちょっとマカオに行けば、香港住民はマカオの勝馬投票代理店を通して賭けることができ、交渉次第でどのようなサービスも受けることができる。

 そのサービスは、贈り物、マカオへの旅行費用、食事、宿泊費のようなものかもしれないし、馬券売上高に対するリベートであるかもしれない。

 最も極端なシナリオでは、リベートの誘引力により、マカオの場外発売所経由の香港競馬の売上が、香港での売上と同等かあるいはそれ以上になる可能性も考えられる。

 勿論、現実には、その実現性は殆んど考えられないが、マカオを経由する賭金が香港の売上のかなりの比率を占めることは起こりえないことではない。正に、2002年8月に行われた香港とマカオの話合いの時、香港ジョッキークラブの関係者が恐れていたのはこの現象であった。

 この時、マカオ・ジョッキークラブは協定こそ結ばなかったものの、トータリゼーターについての控除率を低くすることを約束して、香港でマカオの窓口を開くことを認めさせようとした。

 もつとも、香港政府は、賭金全体が1日1億ドル(約15.4億円)増加し、現在、日々発生しているのと同程度の売上減を補うことが出来るならば、特に、問題としないかもしれない。

 この現象は、将来のサイマルキャスト馬券発売の取引において、マカオに交渉権を与える端緒になり得るのかもしれない。


[South China Morning Post Apr.7 「Benefit from simulcasting lies in China」]